大腸がん(結腸がん・直腸がん)

大腸がんとは

腹痛大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するもの(adenoma-carcinoma sequence、serrated pathway)と、正常な粘膜から直接発生するもの(de novo発癌)があります。日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。日本の大腸癌の統計では、罹患数(2018年)は、男性では、前立腺癌、胃癌に次いで第3位、女性では、乳がんに次いで第2位。死亡数(2019年)では、男性は、肺がん、胃癌についで第3位、女性では今では乳がんをはるかにこえて第1位になりました。欧米では、年次推移は、減少傾向ですが、日本では、罹患数、死亡数ともに増加傾向です。大腸癌は、早期発見でほとんどは完治が期待でき、前がん病変であるの大腸ポリープを切除することで将来の大腸がん発生を予防できる数少ないがん種です。したがって、これまでの検診で行われてきた便潜血検査だけではなく、今後、対策型検診としても大腸内視鏡検査を効果的に取り入れていくことが検討されてきています。大腸内視鏡検査では全てのポリープを切除するクリーンコロン化を行うことで、大腸癌の死亡リスクが79%から90%低下することが出来るとされています。大腸癌は、全大腸内視鏡検査の介入によりその発生を減少、予防することが出来るがんなのです。

大腸がんの原因

発生のリスク要因として、大腸癌の家族歴や既往、長期経過した炎症性腸疾患のほか、アルコール多飲、赤身肉摂取、肥満、運動不足、糖尿病、喫煙など生活の欧米化が挙げられます。リスク要因がある場合には、症状がなくても早めに大腸内視鏡検査を受けるようことが重要です。

大腸がんの症状

早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が出ることが多くなります。症状としては、血便(便に血が混じる)、下血(腸からの出血により赤または赤黒い便が出る、便の表面に血液が付着する)、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、腹痛、貧血、体重減少などがあります。最も頻度が高い血便、下血は、痔などの良性の病気でもみられるため、そのままにしておくとがんが進行してから見つかることがあります。血便の場合、大腸がんの早期発見のために早めに消化器内科などを受診することが大切です。がんが進行すると、慢性的な出血による貧血や、腸が狭くなることによる便秘や下痢、おなかが張るなどの症状が出ることがあります。さらに進行すると腸閉塞となり、便は出なくなり、腹痛、嘔吐などの症状が出ます。大腸がんの転移が、肺や肝臓の腫瘤として先に発見されることもあります。早期の大腸がんや前がん病変の大腸ポリープには自覚症状がほとんどありません。そのため、内視鏡による治療で完治が望める早期発見や将来の大腸がん予防のためには、自覚症状がない時点で大腸内視鏡検査を受けることが大切です。進行しても自覚症状が現れず、転移してはじめて発見されることもよくあります。大腸がんのスクリーニング検査として行われる便潜血検査の陽性で最も多い原因疾患は痔ですが、前がん病変の大腸ポリープ(腺腫)が発見される率(腺腫発見率:ADR)は、30%~40%あるとされているため、陽性を指摘されたら早めに消化器内科を受診してください。進行した大腸がんで現れる自覚症状には、下痢、便秘、腹痛、血便、膨満感、嘔吐などがありますので、こうした症状があった場合もできるだけ早くご相談ください。

当院の大腸がん検査

早期の微細な大腸がんや将来がん化する可能性がある大腸ポリープを唯一発見できる大腸内視鏡検査を行います。大腸全域の粘膜を詳細に観察し、疑わしい部分の組織を採取できますので、大腸がんはもちろん、さまざまな疾患の確定診断が可能です。また、検査中に発見された前がん病変の大腸ポリープは、その場で切除する日帰り手術を行うことで、将来の大腸がん予防につなげています。入院の必要もなく、当院の場合、原則、見つけ次第、高度な内視鏡機器と熟練の診断能力で、正しく診断しそのまま内視鏡治療を行いますので、あらたに切除のためのスケジュールを作らなくてすみ、事前の食事制限なども1度で済みます。
当院では長年に渡り内視鏡分野で世界のトップを走り続けているオリンパス社の最新内視鏡システム「EIVS X1」を導入しています。特殊な波長の光や拡大、炎症を強調できる画像処理などを簡単に行えるため、精度の高い検査を短時間に行うことができます。また、検査を行うのは、大学病院などで長く研鑽を積んできた日本消化器内視鏡学会専門医、指導医である院長であり、丁寧な観察によって微細な早期がんの発見も可能にしています。
軽い鎮静剤を用いてリラックスした状態で検査を受けられますので、苦手意識のある方も安心してご来院ください。

通常光ハイビジョン画像
大腸がん_NB観察 NBIに切り替えることで病変部が確認できます。
大腸がん_拡大拡大することで血管の模様(佐野分類)病変が腺腫か癌かが、その場で判断できます。

日帰り大腸ポリープ切除手術

内視鏡検査当院の最大の特徴は、大腸内視鏡検査からそのまま内視鏡治療に移行する日帰り手術にあります。検査中に発見した大腸ポリープを、拡大内視鏡を用いて、NBI拡大診断や、ピットパターン診断を行うことで、その場で、腫瘍か非腫瘍(将来がん化の可能性がないもの)を判断し、さらに腺腫かがんかを診断し、がんでも内視鏡治療で根治し得る粘膜内や粘膜下層の浅いもの(浸潤距離1㎜まで)か、を診断できる高い検査能力がそれを可能にします。その場で切除可能と判断した場合は、そのまま内視鏡により切除する日帰り手術に移行しますので、別日の切除スケジュールや入院の必要がありません。事前の食事制限や下剤服用も1回で済み患者様の負担を軽減できます。

大腸がんの治療

大腸癌の治療法として、切除(内視鏡治療と外科治療)、化学療法,放射線療法が挙げられます。根治のためには切除が原則です。

内視鏡治療

ポリペクトミー,内視鏡的粘膜切除術(EMR),内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。当院は、先にのべたように1回の検査で、ポリープを認めた場合、その場で特殊光のNBIを併用した拡大内視鏡を用いることで日帰り手術可能かを瞬時に診断しますので、最小限の時間で最適な治療が可能です。当院では、ポリペクトミー、EMRまでを日帰り手術の対象にしています。ESDは、入院での内視鏡治療になるため、当院では、ESD治療で、経験豊富ながん研有明病院や国立がん研究センターにシームレスにご紹介しています。

外科手術

外科的切除は、早期癌でも粘膜下層深層(浸潤距離1mm以上)と進行癌が対象で、腸管の病変切除および周囲のリンパ節郭清を目的に行われます。手術の術式は、結腸(直腸以外)と直腸癌で大きく異なります。

結腸がんの場合

結腸がんはがんの存在部位において術式が決まります。がんがある部位によって切除する腸管の範囲が決まるため、手術には回盲部切除術、結腸右半切除術、横行結腸切除術、結腸左半切除術、S状結腸切除術などがあります。リンパ節郭清は、がんの深さがT1(SM:粘膜下層)までであればリンパ節はD2郭清とし、T3(MP:筋層)以上深い場合であればリンパ節郭清はD3郭清が原則です。

直腸がんの場合

直腸がんの場合は、術式の選択は術後の生活の質(QOL)に大きく関わるため、経験豊富ながん専門施設での手術を当院ではお勧めしています。人工肛門にならない事を患者様は当然希望すると思いますし、当院でもがん研有明病院など、国を代表する最先端のがん専門施設をご紹介しています。

前方切除術

おなか側から切開し、がんがある腸管を切除して、縫合する術式です。腸管の切り口を上部直腸(腹膜反転部より上)で縫い合わせるのが高位前方切除術で、下部直腸(腹膜反転部より下)で縫い合わせるのが低位前方切除術です。低位前方切除術では、一時的な人工肛門(ストーマ)を作る場合があります。が最終的には永久人工肛門を回避できます。低位前方手術も肛門までかなり近い超低位前方手術は、高い技術力を要します。
内肛門括約筋切除術(ISR)は,肛門管に近い下部直腸癌に対して,内肛門括約筋を合併切除することで肛門切離断端を確保し,永久的な人工肛門を回避する術式です。肛門機能の温存などの問題などかなりの高度な技術と判断を必要しますので、相当の実績のある医療施設での実施が大切です。

腹腔鏡手術

開腹手術が今まで、基本でしたが、近年急速に腹腔鏡下手術が普及しています。腹腔鏡下手術では、二酸化炭素でおなかをふくらませ、おなかの中を内視鏡(腹腔鏡)で観察しながら手術を行います。腹腔鏡下手術は開腹手術に比べておなかの傷(開腹創)が非常に小さいため、手術後の痛みが少なく、術後の回復が早いという利点があります。入院期間も、施設により異なりますが、一般的には2週間としているところが多いですが、国立がん研究センター東病院やがん研有明病院など腹腔鏡手術の相当の実績のある施設では1週間を基本としています。

ロボット支援下手術

現在、ロボット手術に使用されているのがダビンチです。1990年代に米国で開発され、2009年に日本で薬事承認されました。2020年12月の時点で、日本では400台以上、世界では約6,000台のダビンチが導入されています。2018年、直腸がんに対するロボット手術が保険適用となり、患者負担の手術費用は腹腔鏡手術と同じです。
3Dのフルハイビジョン画像を約10倍に拡大したカメラ(腹腔鏡)を使用することで、開腹手術の肉眼での観察と比較し、手術部位の非常に細かな解剖まで分かりやすくなり、ロボットの鉗子は、人間の手以上によく曲がり(多関節機能)、ロボット支援の所以である全く手ぶれしない鉗子を使用するため、狭くて深い骨盤の中でも、正確で繊細な手術が行えるとして期待されています。

化学療法(薬物療法)

大腸がんに対する薬物療法には、以下の2つがあります。

手術後の再発を防ぐ目的で行う「補助化学療法」

一般的に、根治切除が行われたステージⅢ期の大腸がんに対して6カ月行われますが、それ以外では薬物治療の発展により3カ月で終わる場合もあります。

手術による根治が難しく、延命を目的とした「切除不能進行・再発大腸がんに対する薬物療法」

手術による治癒が難しいと診断された場合が対象です。がん自体を小さくして手術ができるようにしたり、がん自体の進行を抑え、延命および症状を軽減したりすることを目的として薬物療法を行います。薬物療法で使用する薬剤の組み合わせは複数あり、全身状態、主な臓器の機能、合併症の有無、腫瘍の状態(がんの遺伝子の状態など)から治療方針を決定します。

当院は、大腸癌と診断したら、日本を代表する最先端のがん治療を行っているがん研有明病院やとシームレスにご紹介できる連携体制を構築しており、ただ診断するのみならず、それぞれの段階で、ベストな大腸癌治療を受けられるようにしております。

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